2022/11/09
ソフトウェアエンジニア受難の時代
イーロン・マスク氏がTwitter社の株式購入を進めて買収しCEOに就任しました。同時に、取締役の全員を解任。株式を非公開化し、11/4には全世界の従業員約7500人の半分に相当する3700名に解雇通告したという報道は、驚きをもってむかえられました。
この動きには日本法人も含まれており、相当数の従業員に影響していると見られます。(解雇要件が厳しい日本でリストラが強行されることに関しては、今後、労働問題として動きが出てくるかもしれません。)
これらの動きは、今後のソフトウェアエンジニアにとっては暗いニュースになるでしょう。
背景としては、米国IT企業の業績不振があります。現在、米国経済が直面している最大の課題は高いインフレであり、消費者物価指数は前年比で8.2%と高い水準となっています。モノやサービスの価格は多くの品目で上昇しています。
インフレ圧力を抑えるためにFRB(連邦準備理事会。日本の日銀に相当)は金融引締を進め、量的緩和の縮小(テーパリング)を行っています。政策金利を段階的に引き上げ、先週11/2のFOMC(連邦公開市場委員会)では4会合連続でに0.75%の利上げの実施を発表しました。これは銀行からの借り入れコストを上げることで、消費・投資を行う際のコストを高めて経済を冷やし、インフレを抑制する方向感を打ち出すものです。(これが行き過ぎるとリセッション=不況を招く可能性もあります。)
利上げによって為替はドル高圧力がかかり、例えば円ドルレートは一時期150円超をつけました。
コロナ禍では外出規制などでオンラインの活動が増えた時期は、一時的に盛り上がりを見せましたが、ワクチン接種が進んだことによる行動の活発化。eコマースの成長率は頭打ちとなり、ネット広告もゼロ成長に近い水準です。さらに急激なドル高進行は海外売上比率が大きいメガIT企業の収益を直撃します。
10月末から11月にかけて四半期決算発表が進んでいますが、多くの大型IT企業の決算は悪化し、株価が20~30%を超える暴落をみせる銘柄も散見されています。
このような背景では、IT企業にはリストラ断行のプレッシャーがかかることが容易に予想されるわけですが、そんな中でTwitter社の大量解雇ニュースは一つの規範になりえます。既に雇用凍結の発表やレイオフが噂される企業も報じられています。
(残念ながら)日本でのエンジニアの給料は一部の外資を除いて高騰しておりませんし、国際展開しているサービスも限定的ですので、雇用問題の観点では大きなインパクトは無いと思いますが、米国SaaSの利用企業は多いと思いますので、サービス内容の変更や料金の改定など、今後の動向は注意が必要と思います。