2022/10/26
DXレポート2.2が訴える戦略の重要さ
すでに目を通されている方もおられると思いますが、経産省から7月に「DXレポート2.2」が公開されています。
いわゆる「2025年の崖」を提唱してから数年が経過し、その後も産業構造がなかなか変わっていないという観点からの反省といった主旨が強いレポートと思います。
「DX」という言葉自体は普及しましたが、その解釈は多岐に渡りました。経産省としてはいわゆる「ディスラプター=デジタルを武器にして既存の産業構造をひっくり返すレベルの事業者」の登場により相対的な競争力の低下が懸念されるため、我が国の産業界でもデジタルを用いて、それらに対抗しうるような事業構造の変革を訴えたものでした。
しかしながら、DX=レガシーシステムの刷新や既存業務の効率化のためのシステム化というように、矮小化して受け止められてしまったという反省がみてとれます。
このあたりの経緯に関しては、「デジタル産業への変革に向けた研究会」の討議資料や議事要旨に記載があります。
乱暴にまとめると、「効率化や省力化」によるコストカットだけではもう世界では戦っていけないので、収益に直結する付加価値向上が目指すべき方向であり、その推進にあたっては、「経営者はビジョンや戦略だけではなく、『行動指針』を示すこと」とあります。そのために「デジタル産業宣言」を策定せよという提案もあります。
ただ「行動指針」といっても、そもそもの戦略=既存ビジネスの付加価値向上の施策や新たなデジタルビジネスの構想が描けている必要があるわけですね。現場レベルのQC活動のようなボトムアップの改善施策は「DX」ではない戦術レベルの話であり、もっと組織レベルの「戦略」レベルで議論すべきであると喝破しています。
IT業界がいわゆる人月単価による買い叩きの構造から脱却できないのも、既存事業の効率化の実装に留まっているからであり、この構造を打破しないと全体の競争力向上につながらないというのは、まあその通りかなと思います。
ただ、そうは言っても、初期のDXレポートから指摘されている通り、既存システムのリプレイスや保守・運用などにエンジニアリソースが食われているというのも事実なので、新規ビジネス等に振り分けるのも厳しい事業者も多いのが現状です。
それゆえにトップからの具体的な戦略と行動指針の提示が無いと、なかなか改革にはつながらないというのが「DXレポート2.2」からの強いメッセージではないでしょうか。