2022/07/27
”Web3”入門書の炎上
今週末の7/29は「システム管理者感謝の日」ですね。日頃は何事もなくシステムが稼働するように努める裏方仕事ですが、年に一度は、担当者をねぎらって頂ければ。
さて、先週から今週にかけて”Web3″の入門書の内容が虚偽だらけと大炎上し、結局、回収が決まったようです。いままでIT技術解説書で回収騒ぎになったのは私にも記憶がありません。
書籍「いちばんやさしいWeb3の教本 人気講師が教えるNFT、DAO、DeFiが織りなす新世界」の回収について
これまでのインターネット発展史の事実誤認から、技術観点のでの現状分析などが全くオカシイという事で、著者の専門性や出版社の編集・校閲が機能しているのかなど、多くの点で疑われる一品でした。この手の情報商材的な不思議な解説書を出している出版社は他にも見受けられるため、「ああ、インプレスよ、お前もか」という気分にさせられましたが、さすがに騒ぎを受けて企業ブランドの維持に手を打ってきたのは流石であります。
IT業界では「クラウド」「ビッグデータ」など、数年おきにマーケティング的なキーワードが出てきまして、その度に、それらのワードが表わしているのは何なのか、様々な議論が繰り広げられてきました。それらのコンセプトを体現する具体的な製品・サービスが生まれてきて、ようやく一定の評価がなされ、市民権を得てきたように思います。
バズワード”Web3”に関しても同様でしょう。これまでのインターネットのプラットフォーマーが勝者総取りで巨大化していった背景で、それらへのアンチテーゼとして生まれてきた「非中央集権」コンセプトが核にあります。様々な発展途上の技術を取りまとめて”Web3″と打ち出したのは、いつものIT業界の打ち上げ花火であるわけです。
暗号資産やデジタルコンテンツ取引のNFT、DAOのようなプロジェクト運営、分散金融のDiFi、仮想空間のメタバースなど、多くのコンセプトや技術要素を含む “Web3″は、まだまだ技術面や法整備が整っていないなどの課題も多いです。マネーゲームのおもちゃのようなイメージもついてまわりますが、面白い世界観を提示しているところもあり、何かしら役立つサービスが登場することを願っています。
“Web3″関連の資料では、金融庁の研究案件の報告書が良い出来だと思います。特にシステム関連の方は第三章の「リスクの特定」は参考になるのではないでしょうか。
分散型金融システムのトラストチェーンにおける技術リスクに関する研究 研究結果報告書