Web3.0とP2Pの復権
こんにちは。フィックスポイントの冨です。
2022年になってからのIT業界のトレンド記事では、「メタバース」と並び「Web3.0」も多く見かけるようになりました。
それぞれの言葉は明確な定義は無く、まだまだフワッとした概念であるですが、サービス変化の方向性を示唆しています。
簡単に復習をすると、
Web1.0:読み取り専用ページの時代
Web2.0:SNSとプラットフォームの時代(現在の状態)
Web3.0:非集権化の時代
双方向コミュニケーションが活発になったWeb2.0時代の弊害として、GAFAをはじめとするプラットフォーム企業に情報が集中する構造が挙げられます。プラットフォーム企業への個人情報の集中によるプライバシーやセキュリティーの問題が指摘されています。「Web3.0」はブロックチェーンのような技術スタックとして語られることも多いですが、本質的にはプラットフォーム企業による権力集中構造からの脱却を狙ったインターネットのあり方とも言えます。
ただ、非集権化を狙ったアプリケーションはWeb1.0~2.0の時代にも存在していました。NapsterやWinny、BitTorrentといったP2Pファイル共有ソフトの数々です。接続している個々のノードがファイルのキャッシュを持ち、ファイル転送・検索の負荷を大きく下げるといったものでした。分散型の掲示板アプリなど技術的には先進的であったものの、その匿名性により多くの著作権違反のコンテンツが共有されることで社会問題となり、これらのサービスは撤退を強いられました。
「Web3.0」な世界では、HTTPの代替としての分散型ネットワークIPFS(InterPlanetary File System)が開発されています。
https://ipfs.io/
これはブロックチェーン技術を応用した、データを共有するP2Pネットワークを構築するための技術であり、かつてのP2Pファイル共有ソフトの発展型とも言えます。従来プラットフォーム事業者が管理していた巨大データベースを、これらのP2P情報基盤で管理することで、それぞれのユーザーが自身のデータのオーナーシップを主張できるようになるというわけです。
またアプリケーションもこれらの基盤の上で構築される分散型のDApps(Decentralized Application)に置き換わるだろうと予想されています。
このようの巨大プラットフォーム企業が幅を利かせるWeb2.0なインターネットからの脱却を目的として、ブロックチェーンなどを利用した脱中央集権化といった方向感としてWeb3.0というトレンドが語られています。それに伴いP2P技術も改めて脚光を浴びつつあります。
個人的にはWeb3.0なインターネットへの移行は、まだまだ時間がかかると考えています。「分散化」したアプリケーションはサービスの管理主体や責任所在が曖昧になり、関連法の整備が必須になります。かつてのP2Pファイル共有アプリのようにアンダーグラウンドな活動の温床になりかねません。
仮想通貨が出現当初の期待感をは裏腹に、いまだに主要な決済手段になっていない事をみても、ブロックチェーン技術の社会実装はまだまだこれからと思います。デジタルコンテンツの取引でNFT(非代替トークン)が話題になってきているように、その萌芽はみられますので、今後のITサービスの行く末の大きなトレンドになりうるのか注視していきたいところです。