AIが生む「真実のない世界」へのIT部門の備え
2025年10月末にガートナー社が新刊の紹介を兼ねて、偽情報攻撃への対抗規模の展望を発表しました。
「Gartner、2028年までに誤情報/偽情報対策への企業支出が300億ドルを超えるとの展望を発表」
https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20251030-wwithout-truth
300億ドル=約4兆5000円というこの巨額の支出予測は、AIが生成する偽情報(ディープフェイクや高度化されたフィッシング詐欺)が、もはや企業の評判リスクやセキュリティリスクとして無視できないレベルに達していることを示しています。
これは、従来のセキュリティ予算を大きく超える、IT部門にとっての喫緊のコストと防御の課題といえましょう。
情報戦の危機は、今に始まったことではありません。
数年前から「ポスト真実(Post-Truth)」(客観的事実より感情が優先される社会)や「インフォデミック(Infodemic)」(誤情報が蔓延する状況)といったキーワードで議論されてきました。
しかし、最近の生成AIの進化は、これらの議論を机上のものから具体的なITリスクへと変貌させました。
たとえば、最近では、トランプ大統領の演説・トーク動画が「本物」なのか「偽物」なのかを、一般の視聴者はもちろん、専門家でさえ区別するのが非常に困難なレベルに達しています。
日本国内でも、こうしたディープフェイク:AIを用いた偽情報が選挙戦術に利用された事例が確認され始めています。
また、AIが生成するメールや、声紋を模倣した電話詐欺(ボイスクローン)は、人間の判断能力を巧みにすり抜けます。
ガートナーが提唱する「TrustOps」や、このテーマを考察した書籍『World without Truth』で4つの対策方針が提言されていますが、現実の防御は困難を極めています。
現状、企業の防御は、社員個々人の「リテラシー」に頼らざるを得ない部分が多く、最近のランサムウェア被害の報道やフィッシング詐欺への対応が困難を極めている状況からも、その限界は明らかです。
一方で、ディープフェイクや偽情報を自動で検知・無効化する防御テクノロジーも、まだAIの進化速度に追いついていないのが現実です。
巨額の支出予測は、この問題を「意識改革」ではなく、「技術投資」と「組織的努力」で対処すべきIT課題であると示しています。
当面、IT技術者が取るべき戦略は、この二律背反の状況を前提とした「現実的な防御層の再構築」です。
– 人間のリテラシーを「バイパス」する防御:
フィッシング詐欺対策として、多要素認証(MFA)の強制適用や、ゼロトラスト原則に基づくアクセス制御を徹底し、人間の判断ミスがシステムに致命的な影響を与えない仕組みを技術的に構築。
– 未来技術の「先行評価」と育成:
ディープフェイク検知、AI生成コンテンツ認証技術(電子透かしなど)といった、未成熟であっても将来性のある防御テクノロジーの評価と試験導入を推進し、来るべき「技術的防御の時代」に備える。
AIが生み出す「真実のない世界」において、IT部門は企業と真実を守るための最後の防衛線となります。
人の心・判断力に依存した防御は限界に達した中で、システムの信頼を守り抜く準備こそが、これからのIT部門の存在意義となりましょう。
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