トランプ関税に揺れる世界
4月に入り、アメリカが「相互関税」を導入するとの発表が世界経済に大きな波紋を広げています。中国との間で税率が日々エスカレーションする中、突然90日の延期措置が取られたり、消費者物価への影響を懸念して電子機器への課税を除外すると発表したかと思えば、数日後には別の関税を課す方針を示すなど、状況は目まぐるしく変化しています。このような不安定な環境下で、企業の対応は非常に困難を極めていることでしょう。
今回の関税政策は、アメリカ国内産業の保護と製造業の国内回帰を目的としているとされています。しかし、国際的な分業体制が進んだ現代において、一連の施策はサプライチェーン全体に混乱をもたらし、アメリカ企業自身がコスト増や競争力低下に苦しむ可能性も指摘されています。
もともと近年のアメリカ経済と言えばGAFAに見られる通り、ハードウェアよりもソフトウェアやデジタルサービスに強みをみせています。このため欧州諸国が導入するDST(Digital Services Tax)に対して「米国企業に対する不公平な負担」と見なして批判の対象にしてきました。
さらなる物価上昇への懸念が高まる中、トランプ氏が期待する「伝統的製造業の復活」とは裏腹に、経済構造そのものがデジタル領域へのシフトを余儀なくされることも考えられます。企業は「製品販売」から「サービス提供」への、さらなる収益モデル転換を迫られます。ただし成長余地にも限界があるでしょう。
こうした混乱した状況はIT業界にも影響を与え、新たな技術トレンドの加速を促す可能性があります。特にサプライチェーン可視化ツールや製品ライフサイクル管理(PLM)システムの需要が増加することが予想されます。これらのツールは関税リスク軽減や原産国追跡などに対応するための重要な役割を果たします。
しかし、不況時にはIT予算削減のリスクも懸念されます。日本では過去にも経済危機時にIT関連投資が真っ先に削減される傾向が見られました。それでも企業は競争力維持のため効率化ツールや自動化ソリューションへの投資を続けざるを得ない状況です。このような環境下では、低コストかつ高効率なソリューション提供が求められるでしょう。
今年もIT業界は激動の年となりそうです。企業は変化する環境に柔軟に対応しつつ、新しい技術を積極的に取り入れることで競争力を維持していかなければならないでしょう。