MCPサーバーが牽引する次世代アーキテクチャの可能性
以前にAIによる開発支援が熱い!といった主旨の記事で、コーディングアシスタントツールの進化について書いたのですが、関連して”MCP”というワードも大変に盛り上がりを見せています。
MCP(Model Context Protocol)は、AIモデル”Claude”を開発しているanthropic社が2025年に公開した技術で、主にAIモデル(例えばLLM: 大規模言語モデル)が外部データやツールにアクセスできるようにするための仕組みです。これにより、AIが単なるテキスト生成だけでなく、外部リソースを利用して「行動」する能力を持つようになります。
https://www.anthropic.com/news/model-context-protocol
AI利用に関してより実用的なアプリケーションを開発しようとすると、それらの回答の精度を高めるために、いかに自分が保有しているデータを反映させるかの工夫が必要でした。そのためにRAGなどの技術が用いられてきましたが、個別の作り込みが発生し、まだデータの共有も難しい状況でした。
MCPの登場により共有のアーキテクチャーの基に、データの公開・利用が出来るようになります。例えばローカルのファイル群、データベース、チャットの履歴、開発リポジトリなど、さまざまなデータソースをAIアプリケーションに容易に参照させることが出来るようになります。例えばAI支援の開発ツールでは、既存のソースコードや仕様書などの関連ドキュメントなどをMCPを通じて取り込ませることで、コーディング作業の自動化が出来るようになっています。人間がレビューしながら、AIがプログラムを書き進めていくという感じです。
これらのMCPの仕組みが進化していくにつれ、ソフトウェア開発や運用などが大きく変わるポテンシャルを秘めていると考えています。 例えば、既存のMCPを利用するとなれば、次のようなシナリオも現実身を帯びてくると思います。
要件定義フェーズ
営業チームがSlackで「ECサイトの在庫管理機能強化」と入力
→ MCPサーバーが関連するAPI(Shopify・Stripeなど)を自動検出。
設計フェーズ
Figma MCPサーバーがUIデザインを解析
→ AWS MCPサーバーが最適なクラウド構成を提案。
実装フェーズ
GitHub MCPサーバーが既存コードを分析
→ 重複処理を検出し最適化案を提示。
運用フェーズ
Cloudflare MCPサーバーがトラフィック急増を検知 → 自動スケーリングを実行。 Sentry MCPサーバーがエラーを検知 → 関連するサービスを自動再起動。
大規模なエンタープライズ級のシステムでは、完全にAIにまかせっきりに出来るかと言えば、まだまだ遠いだろうなあとは思いますが、さまざまなデータソースやSaaSの組み合わせでワークフローを構築する場合では、かなりの戦力になるのではないでしょうか。
MCPを基盤とした「自己記述的システム」が主流となり、多くの開発者の役割が「コードを書く」から「コンテキストを設計する」へと根本的に変化していく可能性もあります。 従来のサービスHubやAPIによるデータ連携とはまた違った、MCPを通じたAIエージェントによるシステム連携の可能性に関しては、今年はいろいろな展開が出てくるのではと思います。