AIツール導入で問われる企業の教育力
Microsoftは個人向けMicrosoft 365の料金を大幅に改定し、日本では年額6400円値上げとなりました。新価格では、Personalプランが年額2万1300円に、Familyプランが年額2万7400円となります。
この値上げの背景には、Copilotと呼ばれる生成AI機能の統合があります。ただし、新プランでは月60回までのAIクレジットが付与され、それ以上の利用には別途Copilot Proの契約が必要となります。 競合に近いのが Google Workspaceですが、Gemini AIアシスタントのあるBusiness Standardで年額1万9200円ですから、この辺りが相場感となるのでしょう。
一方、プライベート利用ではChatGPT、Copilot、GeminiやPerplexityなど、無料プランでもかなりのことが出来るようになっています。その他、CanvaやMapifyなど、様々なAI利用のツールが登場しています。開発者向けでもGithub CopilotからClineなど、多くの支援ツールを使うのが普通になってきました。
特に生成AI関連のサービスは、開発から運用に至るまで巨額の投資が必要になっており、巨大IT企業にいたっては発電所をおさえるまでになっています。ただサービスとしては、なかなかユーザーをロックインできないのが現状と思います。ビジネスとして勝ち筋を見つけにくいので、まずは既存サービスへのバンドルで資金回収を試みる段階なのだと思いますが、AI機能の消費量ベース、サブスクリプション型など様々な価格モデルが試行されており、まだ決定打は見つかっていないように思えます。
今後、いろいろな形でAIを組み込んだサービス展開が予想されますが、どのような着地をみるのが興味深いところです。
また利用者側のITリテラシーについてもアップデートが求められます。「AIは人間の作業を置き換える」、「AIを用いて業務効率を上げられない企業は負ける」などとあおられているわけですが、一部の業種については確かにその通りだと思います。ただAI利用についても一定のスキルを身に着けないと作業が楽にならないという側面もあります。AIの応答、作業結果を見極めるスキルも必須でしょう。この辺りの教育機会の提供や教育効果を高めることが次のテーマになりえます。ただデジタル・スキル教育に関しては満足度が半数程度という調査結果もあります。
Gartner、日本企業におけるデジタル・スキル教育の現状と課題に関する調査結果を発表
https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20241118-digital-skill
デジタル・スキルの内容も、例えばデータ加工、集計関数を覚えるといったものから、AIを組み込んだオフィスツールでは、いかに的確に作業内容の指示をするかというものに変わってきます。この辺りは対人で作業指示を出す場合と同様に、元ネタ、前提事項、処理方法、成果の書式などを的確に伝える必要があるわけですが、ひょっとしたら優れた上司はAI利用も上手かもしれません。
AIツールの活用スキルは、今後のビジネススキルの重要な要素として定着していくでしょう。しかし、その教育方法については、現在の満足度の低さを考慮すると、より効果的なアプローチの開発が必要とされています。