IT投資のガバナンス
いろいろとプレスに目を通していると、ちょっと気になる調査結果が出てきました。
Gartner、日本企業のIT投資ガバナンスに関する調査結果を発表 - 多くのCIOはIT部門やITの価値をCEOに示せていないことが明らかに
https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20241021-governance
この調査結果、ちょっと分かりにくいのが、CIOやデジタル担当のエグゼクティブが考えた「CEOがIT部門に対して抱いている不満」の集計結果という事で、
直接にCEOに質問した結果ではないという点がミソです。多忙なCEOには直接に聞きにくいということなんでしょうか。
言い換えれば、IT部門は経営陣からどのように評価されていると考えているかという事に近いかと思いますが、
約4割のCEOが「IT部門からの戦略的な提案が不足している」と感じており、35%が「ITのビジネス貢献が見えにくい」と考えているという事です。
重複回答を考慮しても、半数以上のCIOがIT部門の価値を適切に経営に示せていないと感じているわけです。
これを「IT導入のポテンシャルがあるはずなのだが、うまく提案出来ていない」と取るのか、
「いろいろ手を尽くしているものの、なかなか理解されない」と取るのかでも意味が違ってくると思いますが、
いずれにせよIT導入への取り組みが不十分と自覚していることが見て取れます。
また「リスク軽減のためのIT投資の優先順位付けを評価する組織」に関しての質問に対する回答の結果もあります。
これは平たく言えば、ITセキュリティ投資を決めるのは誰か?という事なのかと思いますが、
IT部門内で完結すると回答したのが18%程度存在するということです。
すなわち事業のリスクヘッジ施策をIT部門だけで対応しようとしていることを示唆しています。
これらを通して言えることは、IT投資ガバナンスの改善は、単なるIT部門の課題ではなく、企業全体の競争力に関わる重要な経営課題であるものの、
経営陣とIT部門の認識ギャップが大きい事が示唆されます。
より効果的なIT投資を実現するためには、組織全体での取り組みが不可欠です。
今後は、テクノロジーの導入自体を目的とするのではなく、ビジネス価値の創出を重視した投資判断と、それを支える評価体制の構築が求められるでしょう。