イーロンマスクに学ぶ工程最適化
10/13のニュースですが、イーロン・マスク氏が率いるスペースX社の大型宇宙船「スターシップ」を大型ロケットで打ち上げ、分離後に発射台に戻ってきたロケットを巨大アームで「キャッチ」することに成功したと報じられました。これはなかなかに驚異的な技術をモノにしつつあります。
スペースX社はみなさんご存じの通りで、2002年に立ち上がった宇宙ベンチャーで、2010年のファルコン9初号機打ち上げ成功。
6000基以上の通信衛星を打ち上げた衛星インターネット通信サービスの「スターリンク」も7000億円近い利益を叩き出し、
ロケットも開発が急ピッチで進み、今や、国際協力有人月探査計画「アルテミス」も、スペースXが開発する月着陸船「スターシップHLS」に依存するという状況になっています。
ここまで躍進した理由として、従来型の宇宙開発はリスクヘッジを十分に行った上で進められてきましたが、スペースXでは失敗上等で改良~再テストを繰り返し、必要に応じてロケットの仕様までも見直してしまう柔軟なプロセスで開発を進めている点が指摘されています。これはIT業界ではウォータフォール型開発とアジャイル開発の方法論にも類似している所があるかもしれません。
この辺の事情に関してイーロン・マスク氏のインタビュー動画が興味深いとの事でご紹介です。
Starbase Tour with Elon Musk [PART 1 // Summer 2021]
https://www.youtube.com/watch?v=t705r8ICkRw
ロケット製造開発の各工程や課題に関して、マスク氏自らが相当細かいレベルまで把握されている事にも驚くのですが、そこで語られるプロセス改善の取り組みに関しても参考になることが多いと思います。(動画の13:30あたりからです)
1.要件はバカバカしいものにせず、リクエスト者を明記して責任の所在をハッキリさせる。
2.シンプル化:工程や部品等の要素を極力削って減らす。時々追加するくらいでないと、十分に削除しているとは言えない
3.最適化:優秀なエンジニアが最適化すると、問題のある前提を疑わずに最適実装しようとするので注意
4.高速化:1~3を完了させた後で無いと、墓穴堀りの作業を高速化することになりかねない。
5.最期に自動化
この手順の順番を守ることも重要で、工程や設計に無駄が残ったままで自動化を行った結果、200万ドルほどのコストをかけたロボットをバイパスするようになった失敗談も語られています。
以前にも業務改善のフレームワークとして”ECRS”をご紹介した事がありましたが、ここでもプロセスの削除、結合、入れ替え、簡素化を行い、それらの後に自動化実装を行わないと非効率な業務をそのままシステム化して塩漬けにすることにつながるのでよろしくないという事を申し上げました。
イーロン・マスク氏が提唱する5つのステップは、効率的なプロセス改善の基本を示しており、特に「シンプル化」と「最適化」の重要性を強調しています。これらの原則は、宇宙ロケットの開発から日常的な業務改善まで、幅広い分野で活用できるでしょう。スペースX社の成功は、従来の常識にとらわれず、失敗を恐れずに挑戦し続ける姿勢が、革新的な成果をもたらすことを証明しています。私たちも、この「アジャイル」な思考方法を取り入れ、常に改善と革新を追求する姿勢を持ち続けることが、未来の成功への鍵となるのではないでしょうか。