IT大手のオフィス回帰の流れ
Amazonは2025年1月から原則週5日のオフィス勤務に戻す発表を行いました。この背景について、Amazon アンディ・ジャシーCEOは「従業員同士が直接オフィスで接することで、企業文化の学習や、従業員同士のコラボレーション、ブレーンストーミングなどの効率化、チーム間のつながりの強化といったオフィス出勤のもつメリットの拡大を目的としたもの」と述べています。Amazon以前にも様々な大手IT企業がハイブリッドワークからさらに出社方針へシフトしつつあります。日本でもIT企業の知人と話していると、「完全リモートはダメで、最低限、週に**日の出社が必要になった」など、聞くことも多くなりました。
ただ、このAmazonの動きに関して、元AWSのジョン・マクブライド氏の投稿が話題になっています。
https://x.com/johncodezzz/status/1836205682539786345
簡単にまとめると、Amazonは多くの都市から税制優遇を受けており、これらの優遇措置は、従業員がオフィスで働くことを条件としている場合があります。地域振興・雇用創出のために優遇してみたら、人が全然集まらないとなれば優遇する理由は無くなるわけです。オフィス回帰の流れは、これらの税制優遇を維持するためと推測しているわけです。
この優遇措置がどのくらいの規模感か、非営利監視団体Good Jobs Firstのデータを基にまとめたページがあります。
Which US States And Cities Give Amazon The Biggest Tax Breaks?
https://digg.com/data-viz/link/amazon-tax-cuts-states-cities-subsidizing
これによるとオレゴン州の15億ドルを筆頭に、過去20年あまりで約70億ドルの企業補助金・税制優遇を受けています。
Amazon社の当期純損益は2022年度の損失(27億2200万ドル)から2023年度は304億2500万ドルの黒字にV字回復しましたが、最近までは数億ドルであった規模感を考えれば、それなりのインパクトを持つ数字とも思えます。
これを聞いた上でオフィス回帰のニュースに改めて触れてみると、作業効率の向上だけがオフィス回帰の動機ではないという話は説得力を持ちそうです。
リモートワーク/ハイブリッドワークも一長一短あり、IT業界がコロナ禍で売上を伸ばしたデジタルツールをもってしても課題が解決できなかったというのは皮肉な話にも聞こえます。 リモートワークは生産性が低下すると言われる一方で、通勤ストレスの軽減やワークライフバランスの改善につながります。
IT企業は、オフィスワークとリモートワークのバランスを取りながら、財務上の課題解決と従業員満足度の向上を両立させる新たな働き方を模索しています。
リモートワークは否定されるべきものではなく、むしろ企業と従業員の双方にメリットをもたらす可能性を秘めています。今後は、各企業の状況に応じた最適な働き方のバランスを見出していくことが重要となるでしょう。