選挙にみるIT利用の業務効率化
都知事選が終わり、結果についての論評もあれこれ出てきているわけですが、IT業界人として興味深いのは安野たかひろ候補でした。
提唱される政策などに関してはいろいろなお考えの方がいらっしゃると思いますので深入りは避けますが、安野氏の選挙運動におけるシステムの利用に関してはなかなかに興味深いものがあります。「AIタウンミーティング」を用いたコミュニケーション、ソフトウェア開発でおなじみのGitHubを用いた政策改善などです。
安野たかひろ:都知事選マニフェスト
https://github.com/takahiroanno2024/election2024
ここでは政策マニフェストのブラッシュアップのためにリポジトリを利用されているわけですが、これ以外にも何らかの企画・アイディアなどを大勢で練り上げていくためのツールとして、非常におもしろい試みと思います。
GitHubをあまりご存じない方にむけて簡単に説明しますと、リポジトリで管理されている、あるプロダクトの課題点を指摘する場合にイシュー(Issue)を作成し、そのトピックに関して議論を行います。また具体的な改善提案については、プルリクエストを作成し、内容が妥当であると判断された場合には、そのリクエストがプロダクトに取り込まれます。
安野氏のリポジトリでは、この GitHub Actions ワークフローで高度な自然言語処理技術と機械学習を活用して、イシュー管理を自動化しています。
OpenAIのAPIを使用した不適切コンテンツ、重複イシューの検出
Qdrantベクトルデータベースを使用した効率的な類似イシュー検索
すでに技術面での解説記事や、ローカル環境での構築のやり方などが公開されているようですので、ご興味のある方は検索してみてください。
選挙戦当初は「一般の人に受け入れられるのか?」といった批判も目にしまして、確かにその通りと思うところもありましたが、選挙ポスター貼りのボランティアの活動をある種のゲーム化を行ったりするなど、コロナ禍初期の台湾のオードリー・タン氏を思わせるような、シビックハッカーによるテクノロジーを利用した正面突破は、業務改善の事例として注目すべきポイントかと思います。
大量の立候補者によるポスター掲示板不足や政見放送での眉をしかめるような内容など、いろいろな話題に事欠かなかった選挙活動でしたが、全面的にITを活用した活動の効率化という視点においては、面白い人が出てきたなあという印象でした。