AIへの投資不足
5/14未明にOpenAIからChatGPTの大幅アップデートが発表されました。新モデル:GPT-4o の発表により、文章の解釈の向上、リアルタイム翻訳、画像生成能力の大幅アップなどです。また音声のトーンを理解するので感情も理解できる可能性も出てきました。なかなかに凄まじい進歩です。
先週の5/7に、AIへの民間投資額「日本はアメリカの100分の1」という報道がでまして、この元ネタはスタンフォード大学が出している “Artificial Intelligence Index Report 2024″と思われます。”FULL REPORT”のP247に掲載されていました。Webページの下の方では様々な統計値が並んでおりますので、AI市場など興味のあるかたは眺めているといろいろな発見があるかもしれません。
https://aiindex.stanford.edu/report/
民間投資額でいえば米国が圧倒的で672.2億ドル、続く中国が77.6億ドル、報道の見出し通りで日本は6.8億ドルと文字通り桁が2つ違い。韓国、シンガポールの半分という規模感です。日本でもAI関連が盛り上がっているように見えて、国際水準でいえばまだまだといったところです。
関連したトピックでは、ガートナー社もAIへの取り組み状況のレポートを出しています。
Gartner、AIへの組織的な取り組み状況に関する調査結果を発表
https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20240509
これによると日本企業と海外企業(米、独、英)における組織的な取り組み状況を調査した結果、AI専門の部門などを設置しているのは日本では38%と海外企業の約半分程度という結果です。
さらにはAI開発に必要な人材・スキルに関して、日本の大企業の64%が不足していると回答しており、非常に枯渇感を訴えています。
ICT人材の偏在問題に関しては以前から議論になっており、通信情報白書では、人数比では米国の1/4程度の105万人程度、またその72%がベンダ―企業に属するという分析もあります。
もともと利用を検討していくべきユーザー企業側に人が少ないという事も、AI活用が進まない要因の一つではないかと思われます。
思い起こせば”Industry4.0″の機運が高まったころには、「製造業のデジタル化を進めて生産情報を可視化し、新しいビジネスモデルにつなげよう」というコンセプトで、将来的にはAIによって生産やロジスティックが最適化されるといった論調も多く見られました。ここで大量のデータとAI・機械学習により、運用やビジネスプロセスの予測・洞察・自動化の実現が期待されたわけですが、この分野の投資の少なさは後のオペレーションの効率化の分野で差をつけられる可能性を示唆しているのではないでしょうか。
かつての「モノづくり大国」と言われた日本が復活できるのか。AIの有効活用は生産性を上げる鍵の一つでありましょうが、取り組みの規模感をみるに人も金ももっと突っ込んでいかないといけないのでしょうね。