みなさん、こんにちは。
田辺三菱製薬プロビジョン株式会社の佐々木と申します。
本日お話しするRPAというツールはその導入の難しさから、導入に躊躇したり、一つの部署に入れたもののスケール化の部分で二の足を踏んだりしている企業が多いと聞いています。
本日はそのような企業の皆様に少しでもお役に立つことができるよう、自走型RPAによる生産性向上とデジタル人材の育成という内容でお話しをさせて頂きます。
まずは、簡単に私の自己紹介をさせていただきます。
1992年に、いわゆる工場に設備のエンジニアとして入社いたしました。
その後、さまざまな工場の管理部門を経験しております。
大きな転機が現れたのは、2008年で、情報システム部に異動になり、全社のIT教育をすることになりました。
これは、私がITに強かったからではなく、むしろITの素人だからこそ一般の方々にわかりやすいカリキュラムが作れるのではないか、そういう期待を込めての私の担当でした。
また、情報システム部が大きく変わっていく時期に、こちらもあえて情報システムの知識がない私が業務改革や意識改革を推進するという役割を担いました。
そして、2015年に社内にシェアードサービスが出来まして、そこで得た知見を活かす機会をいただき、2年間業務改革と意識改革を徹底的に推進してまいりました。
そして、2016年末にRPAと出会い、現在に至っております。
田辺三菱製薬プロビジョン 会社概要
まずは当社の概要を説明させていただきます。
2007年10月に発足いたしまして、2019年度の連結売上収益は3,798億円、連結従業員数は6,987人の会社です。
創業以来、340年の歴史をもつ製薬企業です。
製薬企業と言いますのは、比較的規制が多いため保守的ではございますが、本日お話しするRPAのように、色々なことに対するチャレンジには非常に寛容な組織で、大変やりやすい会社です。
また、三菱ケミカルホールディングスの一事業会社という側面も持っております。
私が所属しておりますのは、この田辺三菱製薬の子会社である、田辺三菱製薬プロビジョンです。
この会社は2019年1月に発足した会社で、世間一般でいうところのシェアードサービスの機能も持っていますが、特徴的なのは当社グループの情報サービスを担う中核会社、そしてデジタル変革を推進する会社であることです。
したがって、このRPAの推進事務局もこの会社に設置している状況です。
当社のRPAの取組の歩み
当社のRPAの歩みについて、お話します。
先ほど申し上げた通り、2016年末にこのRPAの情報をキャッチして、翌年にはトライアルを開始しました。
そしてそのトライアルも早期に総務、経理、人事、情報システム部といったところを巻き込みながら合同トライアルを行いまして、約2ヶ月間でロボット10体、1,000時間の削減を成し遂げ、このRPAの有効性を確信しました。
そして、全社展開に対する色々な準備をしながら、2019年7月にこの田辺三菱製薬プロビジョンにRPA推進事務局を設置し、全社展開を開始したという流れです。
当社はややユニークな考えを持ってこのRPAを取り組んでいるため、UiPath社の事例紹介にも掲載されております。
さて、本日ご視聴の方の中にはRPAについて、まだそれほど詳しくないという方もいると思いますので、簡単にRPAについてご説明致します。
RPAとは?
RPAとは、人がパソコン上で行なう作業をソフトウエアに覚え込ませて代行させる技術で、得意な業務は「定型、繰り返し、大量」と言われています。ただ少量、多品種業務についても、ルールがあればRPAが可能で、むしろ日本の場合はそういう業務のほうが多いのではないかという側面も十分にあります。
月初や月末に決まった作業、Excel加工などを行なう、Excelの大量データをシステムに繰り返し入力する、こういった業務はまさにRPAが得意としている業務です。 機能面で見ますと、システムやネットからデータをダウンロードする、Excelを加工する、またそれらをPowerPointに貼り付ける、こういったこともできます。
そして、システムへの入力を行なっていく、またメールを送信する、これらを組み合わせて一連の作業をやることももちろん可能です。
我々が2年間使ってきた感想としては、適応可能な業務は非常に多いということです。
RPAが爆発的に普及した理由は、この絵だと思っております。
例えば、セルを読み込む、パッと見ただけで直感的にわかるような部品を画面にドラック&ドロップし、そして設定画面で設定をしていく。 色々な製品がありますが、基本的にRPAというのはプログラマーでなくてもプログラミングが可能なツールです。
これがおそらく、大きくブレイクした理由ではないかと感じております。
RPAの展開方法
さて、このRPAの展開手法は大きく2つあります。
1つが、当社がチャレンジしている自走型というもの、そしてもう1つが事務局主導型というものです。
この自走型の特徴ですが、いわゆる現場でロボットをつくるということです。
そのため、現場の育成、開発者の育成と統制がカギとなってきます。
難易度は正直、高いと思います。ただし、メリットが非常に大きいです。
業務に精通している方々がロボットを作成するため、効率的にロボットを作成することができます。
また、現場の方々が作る分、そういう方々が増えればロボットも比例して増えやすいという傾向があります。
また、現場で業務に精通している方々が行なうため、ロボット作成時に業務の見直しや効率化が比較的起きやすいという性質もあります。
また、現場のITリテラシー、業務改善リテラシー、業務改革マインドが向上する、これがやはり一番のメリットかと考えております。
デメリットとしては、現場の負担感というのはどうしても大きくなってきます。
しかし、このデメリットを補って余るだけのメリットがある手法であり、当社もこれにチャレンジしている状況です。
RPA導入の背景と狙い
さて、当社におけるRPAの導入の背景と狙いについてお話します。実は私がRPAに出会った2016年末、私は一つ大きな課題感を持っておりました。
当時、クラウド、AI、ビッグデータ、そういった言葉が出始めた頃でした。特にシステム開発においては、非常に大きな潮流の変化を感じておりました。
従来のようにシステム会社にお願いをして、システムを作ってもらう。
情報システム部門に要件を言って、システムを作る会社を探してもらって、1年かけて要件定義をして、作ってもらって、テストをして、稼働は1年半後という、そういうロングスパンのシステムづくりから、クラウド上の用意されたシステムを利用する。
また、自分たちでそのクラウドを少しカスタマイズしながら活用していく、いわゆるプログラミングの民主化、システム開発の民主化、ローコーディング、ノンコーディング、こういったことが大きな潮流として発生していました。
そして、今後大きく飛躍していく企業がどういう企業かと考えると、それは自明で、こういったツールを巧みに使いこなす人材を揃えている会社だと、当時そう考えておりました。
一方、そういう人材をどうやって育てていったらいいのだろう、これに私は答えを持っていませんでした。
そして、これが私の大きな課題感でした。
そのことを考えているときに、私はこのRPAと出会って、すぐにこれだと感じたわけです。
RPAというツールは、気軽に始められて、効果も出やすい。正直プログラミングというのは大変なところもありますが、ある意味楽しいことです。
そして、ほとんどの部署で活用できます。
そして、このRPAでロボットを作る過程において、自然とこのプログラミング思考と言うか、ある意味論理思考と言うか、こういうものが身に付くツールです。
つまり、企業がデジタルシフトを進める入り口としては、最も適したツールです。
デジタル人材を育成していくためのきっかけづくりとしては、最高なツールと考えたわけです。
そして、デジタル人材を育成するためにもRPAを会社に導入しましょうという提案を会社にしました。
会社としてもそれは面白い考えだし、是非やろうと言ってくれて、そして当社のRPAの基本方針というのが決まりました。
RPA全社展開の基本方針
業務改革に加え、ITリテラシーの底上げ、ITスキルの高い社員育成、こういったことを目標に、2019年から20年にかけてドライブをかけて全社にRPAを浸透させていこうということになりました。
その手法としては、ロボットの作成は現場で頑張ってもらい、そのためには社内でしっかりとした事務局を置いて彼らのサポートをしていく体制をつくる、こういったことでスタートしました。
自走型を選択したもう一つの理由
一方、この自走型を選択したもう一つの合理的な理由もあります。
実はRPAの本質を考えると、RPAを適応させる領域というものは、従来のシステム開発手法で照らし合わせると、投資対効果が見込めずにシステム化を見送った小粒な業務になります。
大変だけれども週に30分しかない、システム開発をすると300万、500万かかる。
ある意味、手作業をやり続けることが合理的な意思決定でした。
社内にそういう業務がたくさんあることも分かっていました。
こういった小粒な業務を、事務局みたいなところがヒアリングをしながらロボットを作るというのは、社内コスト的に割が合いません。
やはり、業務を熟知した現場の方々が行なうのが、最も合理的な選択肢です。
そういった意味でも、RPAには自走型が最もマッチした手法ではないかと考えたわけです。
活用事例
さて、簡単な適用事例を2つご用意しました。1つ目はどの会社にも存在するような勤怠管理業務です。
システムからデータをダウンロードして、ファイルを部署ごとに分割し、メールで送るという業務です。これは分解してみると、Excelのファイル分割+メール送信を繰り返すというRPAの基本形です。
当初はこんなのできるかな?という思いもありましたが、やってみると、RPAの基本形になりました。
請求書から人間が金額のみExcelに転記し、転記したあとはロボットが代理で入力していく。
これもExcelの読み込み+システムへの入力を繰り返すということで、RPAの基本形になります。
今は、この請求書をAI OCRで読むことも、もちろんできます。
RPA導入の期待効果
さて、このRPAの導入の期待効果についてお話したいと思います。
これは当社で実際に導入したあとから振り返って分かったことも入っています。
RPAというのは、時間削減効果だけではないということです。
もちろん、付加価値業務のリソース配分、これがメインではありますが、例えば業務品質の向上。
人間がやっている前提だと、月に1回とか週に1回が限度だけれども、ロボットが代行してくれるのであれば毎日実施をする、ちょっとしたミスも毎日見つけることができる、こういうこともできます。
また、今までだと月曜日の朝、出勤してデータを加工して昼から初めて分析ができる、そういうことが月曜日の朝に、ロボットが代行してやってくれている。そうすると朝一番から分析の会議ができるということです。
これは意思決定スピードが上がるということに他なりません。
また、ロボットを作る過程の中で業務が可視化され、標準化も促進していきます。
ITリテラシー、ITスキルの向上については先ほど申し上げた通りです。
また、これはやってみてつくづく思ったのですが、RPAというのは色々な単純作業、しかも期限が決まっているような大変な仕事ですが、これから人間を解放してあげることで結果的にモチベーションの向上、そういったことにつながるということも非常によく分かりました。
自走型RPAの全社展開の方法
さて、この自走型RPAの全社展開の方法、いわゆるスケール化について、ここからお話ししていきたいと思います。
自走型の全社展開を支える3つの要件
私は最初から自走型を目指していましたので、多くの企業の事例を研究していました。雑誌を見たり、セミナーに行ったり、インターネットを調べたり。
その結果、このRPAというものは業務を現場がなんとか見つけてくれて、そしてそれらを実装する開発者を育成する。
そして、彼らがしっかりとそういうことができるようなソフトウエアを用意してあげたり、ハード面でのガバナンスを用意してあげたり、稼働の管理をしていくということをしっかりと揃えれば、決して自走化はできないものではありません。
むしろ、これを揃えれば、自走化は成功するという確信を持って我々は自走化を進めて来ました。特に、この開発者育成、この部分が最も重要ということもよく分かっていました。
現場の巻き込み
さて、この現場の巻き込みについて詳しくご説明したいと思います。
やはり、現場の啓発活動というのは、きめ細かく対応する必要があります。全社に広めるのであるならば、全社説明会というのは必須になってきます。
ここで事務局の考えや思いをしっかりと伝達することが重要になってきます。
当社の場合は、実は全社展開の前に、草の根活動として色々な部署に対して説明をやっておりました。
その結果、全社説明会のときには社内に3割くらいはRPAをやりたいという方々がいたのも、当社でうまくいった理由かなと振り返って思っています。
また、全社展開したあとも、部署ごとにもうちょっと詳しく話を聞きたい、RPAのこの部分が懸念だ、こういったことを言われる部署がありましたので、そこに対してもしっかりとその部署に合った説明をすることが大事ですし、当社もそうやってきました。
興味を持ってもらうコツとしては、やはり動画が一番効果的です。
また、目の前でそのロボットを作ってあげて、「あ、そんなに簡単に作れるんだね」と思ってもらうことも重要になりますし、リスクや処方箋に対してもしっかりと説明することで安心感を醸成していく、こういったことも大事になってきます。
当社のRPA展開モデル
さて、当社のRPAの展開モデル、基本戦略についてお話したいと思います。これも練りに練った考えです。
実は私はRPAに出会う前は、プログラミングは全くできなかったので、もちろんRPAをマスターするために外部の研修に行きました。
そこで感じたのは、やはりプロの方々が作るテキストというのは、どうしても素人の私には難しかったということです。
きっとプロのプログラマーが見たら非常にわかりやすいテキストだったと思うのですが、私には少しハードルが高いものでした。
そう考える時に、こういったテキストで全社研修をすると多分みんなつまずくだろう、そういった思いからテキストについては、自社でオリジナルのものを作ることにしました。
内容もみんなが身近に感じられるような社内のシステムを使ったり、実際の業務の中で活用できるシーンが思い浮かべるような演習問題にしたり、そういった工夫でテキストを作りました。
ただし、このテキストで受講をした方々がすぐにロボットが作れるかというと、さすがにそれは難しいところがあります。
10人もいれば一人くらいはスッと作る方ももちろんいらっしゃいますが、ほとんどの方々はやっぱり研修の内容と実際のロボットづくりの間に壁がありまして、そこを一人で乗り越えるのは難しいだろうということは容易に想像できました。
そのため、最初の3台から5台というところを目処に、事務局が横につきながら一緒にロボットを作ってあげる、そういった形でみなさんに最初の壁をうまく乗り越えてもらうような工夫をしています。
一方、これは現場の方が一人でやってしまうとどうしてもつまずいてモチベーションが下がってしまうので、それらを手助けしているという側面もあったり、現場が一体どこでつまずくのだろうか、そういったところをしっかりと探すといったマーケティング的な要素もあります。
そういった形で1台、2台とロボットを作ることによって現場の方々が、「私が研修を受けたRPAを使って、この業務をこう自動化しました」ということを自部署でしっかりと説明をしていただく、いわゆる職場でのエバンジェリストとして活躍していく。
これが当社の基本戦略になります。
開発者育成モデル
さて、もう一つユニークな考え方をしています。私は、このRPA展開の事務局をサービス業と考えています。
つまり、現場の開発者を顧客と定義して、彼らの満足度向上を重視しています。
彼らは研修に来る時には不安感と期待感があり、そして研修を受けて、「面白い」という満足感、こういったものを持ってロボットづくりに入ります。
そして、作っていく中で作る喜び、そしてロボットを作ると、同僚に「ずっとこれが苦痛な仕事だったんだ、本当に助かった」そういう声をもらい、貢献する喜びを感じます。
そして、最初の1台2台は必死ですが、それが3台目4台目になってくると、今度は難しいロボットにチャレンジし、攻略する喜びを感じていきます。
その次には、ロボットは動くけれども、もっともっと早く動くロボットにしようとか、ちょっと事務局をあっと言わせたいとか、そういったエレガントに作る喜びというところにいきます。
そして、どんどんロボットを作っていきますと、やはり時間が限られた中でたくさんロボットを作っていかなければいけないので、もっと効率的に作るにはどうしたらいいのだろう、そういった願望が出てきます。
事務局というのは、この開発者のマインドを意識し、どこにいるかを把握し、右側右側に向かってステージを移行させていく。
これをハンズオンサポートと呼んでいるのですが、事務局というのは、ある意味トレーナー業だと考えています。
ユーザー研修
さて、このユーザー研修ですが、どういったことをやっているかについてお話ししたいと思います。これが研修の全体像ですが、我々は色々なトライアルをして、そういった知見を盛り込んだオリジナルテキストで、比較的多くのことをやっております。
ただ、一人でやると5日間くらいかかる内容ですので、実はみなさんに繰り返し言っているのが、マスターしてもらうのが目的ではありません、ということです。
事務局が一緒にロボットを作るので、みなさんは「なんかこれなら自分でもできそうだ」と、また、そもそもどういったことができるかということを理解することが一番の目的だ、と。
職場に帰って、この業務がRPA化できそう、そういった見極めができるようになれば、もうそれは研修としては大成功なんだ、と。
そういうことを伝えて受講して頂いています。 このような形でオリジナルのテキストを使って、今回こんなことをやるんですよ、そのためにはアクティビティはこういう配置をするんですよ、そして設定の全体像はこうなっているんですよ、こういったことが理解しやすいようにテキストを構成しています。
そして、このテキストは当日だけではなく、みなさんの参考書として活用できるように意識していて、実際受講生の方々はこれらを繰り返し読みながら技術アップに励んで頂いています。
キーとなる推進事務局の仕事
さて、以上のようなことをやろうとすると、やはり推進事務局の仕事がキーになってきます。それらについてお話ししたいと思います。
まず一番メインのRPA開発者の育成と支援についてですが、一つは集合研修がメインになってきます。
当時は一つの部屋に集まって、講師とアシスタントをつけてしっかりと教えていたのですが、今ではこのコロナ禍の影響の中で、ビデオ会議でやっています。
なかなか思ったようには行きませんが、少しでも実機での操作を入れながら、みなさんに体感してもらって、先ほどの目的が達成できるように頑張っているところです。
二つ目がこの支援ツールというところで、現場の方々がつまずいた時に見ていただくFAQであったり、または実装時間を短くするような共通部品であったり、こういったことを事務局として、できる限り多くのことを用意しています。
支援体制としては先ほど申し上げたハンズオンサポートで、3つから5つを一緒に作ってあげるという活動をしています。
推進事務局の仕事
さて、もう少しこの事務局の仕事を俯瞰的に見てみたいと思います。先ほど言いましたのは、この開発支援という領域ですが、それ以外にもリサーチと言いまして、色々なバージョンアップの機能調査や動作調査、そしてこの事務局は他にも新しい技術の調査などをしています。
AI-OCRとかビジネスインテリジェンスとか、AI-チャットボットなどといったものを調査しながら、そして導入もしながらRPAを連携させて、より多くの業務の自動化をするような検討をしています。
また、普及活動としては説明会や相談会、そしてベストプラクティスの展開、こういったことも重要になってきます。
ガバナンス面では、みなさんがロボットを作る時のルールである開発標準であったり、運用ガイドラインであったり、ロボットのIDの考え方、こういったことをしっかりと検討しながら進めています。
また、運用管理として、みなさんがロボットを使うためのパソコンの管理、ログの解析、エラーの解析・管理、こういったことをやっています。
RPAガバナンス
さて、このRPAガバナンス、みなさんやはりRPAって分からないし、怖いから躊躇する、そういう話もありますが、これらについて焦点をあててお話したいと思います。これは製品選定という視点で作った資料ですが、これが一番ガバナンスということでわかりやすいので、この資料を用意しました。
RPA製品には、色々な製品がありますが、ぜひ自社のRPA展開の手法に合った製品を選ぶことをお勧めします。
また、このガバナンスも、非常に製品に左右されるところです。
例えば、決められた人しかロボットを作ることができないとか、事務局が認めたプログラムのみ登録可能になっているとか。
つまり、世間でいういわゆる野良ロボットができないような仕組みを作るということです。
あとは実行についても同じですね。
他の部署のロボットが容易に動かせないようなことにしておくとか、ロボットIDに関してもセキュアなパスワード管理の機能を持っているとか。 そして、こういうことを統制しつつもログを見ながらより高度な管理をしていく。
このようにガバナンスをしっかり利かせた運用を考えた時に、やはりルールだけで守ってもらうというのは少し無理があります。一つの製品の中で、こういう機能を持っている製品、自社が利かせたいガバナンスに対して、そういう機能を持っている製品を選ぶ、これがやはり非常に重要になってきます。 もう一つRPAガバナンスというページを用意しました。
RPAは、業務の担い手、これが人間からRPAに変わるわけで、実は業務自体の本質的なリスクは変わりません。
従って、このRPAをしっかりと理解して、正しく活用できるか。
そしてRPAが停止したときのリスク対応、こういったものがRPAガバナンスの本質かと考えています。
一つの方法論として、当社では実際のロボットの稼働状況やエラー状況をBIツールで可視化し、解析して、安定化という取り組みをしています。 もう一つは実際にRPAが停止したとき、システムそのものがダウンしたとき、そういったことを考慮してシステムを冗長化したり、万が一止まっても実際にその業務が止まらないようにコンテンジェンシープランを考えておく。
ロボットが途中で止まっても、途中から再開できるようなロボットの構造にしておく。こういったことをやっていくことが非常に重要になります。
しかしながら、論理的に考えていくとそれほど難しいものでもないと思います。
さて、こういう取り組みを進めた結果、当社が今どういう状況になっているかについて、簡単にご説明させて頂きます。
約2年間の活動でこの自走型RPAにチャレンジして、311名の方々に研修、受講いただきました。これで一つの礎を築くことができたかなと感じています。
そして、ロボットも285体、効果につきましても現時点では40,000時間を越えており、一定の成果を上げることができました。
人材育成の視点
実は本日、ある意味一番お伝えしたかったことは人材育成の視点です。前半の説明で、RPAを使うことでプログラミング思考が身につくと言いましたが、もう少し整理してみました。
RPA開発をしていますと、7つの力がつくと考えています。
一つはこのITリテラシー、ある意味プログラミングリテラシーかもしれません。
変数とかデータテーブルとかマージとかいった言葉もわかりますし、これが何をするかということもわかります。
そして、ロボットを作る中で業務整理ということを自然とやっていきます。
また、整理しながらこういうことでいいですねという形で要件定義もやっていきますし、そういったスキルが少しずつ身についていきます。 また、ロボットをシンプルに作ろうとすると、業務担当者に対して標準化をある程度迫っていきます。
「ちょっとこのロボット複雑になるので、この業務はこういうふうにできませんか?」そういった提案をしていきます。
また、現場のヒアリングを通じて「言っていることってこうだよね」というモデル化をやっていきます。
また、条件分けもすごく強くなっていきます。
そして知的好奇心ですね。RPAをやっている方々から今度AI-OCRを使ってみたい、ビジネスインテリジェンスを使ってみたい、導入予定はあるんですか?という声が自然とでてくる、そういった知的好奇心も養われていきます。
ある意味RPAの自走型の最大の効果は、こういった人材を育てることではないかと感じています。
今後の展望
さて、今後の展望についてお話したいと思います。当社、左下のRPA全社展開ということで一つモデルを作りました。
これからは、一つは左上で、ベストプラクティスを展開したり、関係会社、国内、海外にもこのRPAを広めていったり、さらにRPAの開発者を育成することによって、より多くの業務にRPAを適応していきたいと考えています。
そして、右下の色々なツールですね、AI-OCRを使ったり、APIという機能を使ったりしながら、適応範囲の拡大と言うか、深堀りしていきたいと考えています。
そして最後、右上ですね。
我々はこの一般の、ある意味素人の方々、私も含めて素人ですが、そういった方にこのデジタルツールをうまく活用してもらうための一つのコツというか、方法論というものを身につけましたので、これらを別のデジタルツールに適応していきたいと思います。
ビジネスインテリジェンスであったり、プロセスマイニングであったり、AIチャットボット、こういったものに対してこの手法を適用することによって、会社の中にもっともっとデジタル技術を使えるような環境を用意し、みなさんにそれを使って活躍して頂きたい、そういったことを考えています。
本日お話しした内容が皆様に少しでも役立てれば幸いです。
ご静聴、ありがとうございました。